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スウェーデン人が「脱自動車依存」の知恵を求めに日本にやってきて、複雑な気分になる [都市デザイン]

スウェーデン人の建築家そしてジャーナリストの訪問を受ける。なんでも日本の都市と交通関係の研究をするために、奨学金をもらって来ているそうだ。なぜか、私の名前がスウェーデンのホームページに載っているらしく、私に会いたいというので喜んで会う。

「なぜ、日本を研究するのですか」という私の質問に、「スウェーデンは自動車社会が進み、公共交通の利用率は激減し、郊外型のライフスタイルが定着して、地元の商店街はほとんど死にかけています。このままでは、アメリカのように自動車依存型の社会になってしまい、エネルギー効率が悪くなり、コミュニティも崩壊してしまいます。それに比べて、日本は自動車に依存しないで、歩いて生活ができると聞きました。その優秀さ、なぜ、自動車依存を回避できるのか、その理由を探りにきたのです」と言う。「アメリカのように自動車依存型」と言った時に、「地獄への道途中(Half way to hell)ですね」と突っ込みを入れたら、私が先方の真意を理解したと思ったらしく、大きく嬉しそうに頷いた。

東京は交通面でのエネルギー効率という点では、世界に冠たる都市である。これは、私は1990年代半ば頃から気づいていた。この移動エネルギーのよさは、公共交通の利用率の高さと生活圏がほぼ徒歩圏で収まり、自動車依存が低いからである。しかし、例えば、その頃、アメリカでTOD(トランジット・オリエンテッド・デベロップメント。公共交通を主体とした街づくり)のコンセプトが注目されて、アメリカで先行事例として海外事例が紹介されたのだが、それは日本の田園都市線などではなく、スウェーデンのニュータウンであった。この事実には、個人的には違和感を覚えていたが、まあ予算を確保するためには、先進事例としてはアジア人の事例よりヨーロッパの事例の方が受けがいいのだろうなぐらいに思っていた。また、東京に目を転じれば、東京はその優位性を世界に誇るというよりかは、世界中が驚嘆の目を向ける歩行者都市である下北沢をぶったぎる広幅員の道路を通す計画を押し通したりして、むしろ外国人を呆れさせるようなことをしていたので声高にも主張できないでいた。そういう中で、日本より優れた事例としてアメリカ人が捉えていた国の人が日本に知恵を求めにきた。ちょっとわくわくする。

とはいえ、事実を隠してばかりもいられない。東京はなぜ、こんなに自動車依存度の低い都市として成立しているのですか?という質問には、行政がぼやぼやしてしっかりとした道路を整備する前に、民間が鉄道ネットワークを縦横無尽に整備したので、結果的に鉄道で移動するという都市形態が形成されただけです、と説明する。そして、行政はよせばいいのに、今頃になって高い道路を一生懸命整備し、さらにその道路利権を放棄もせずに、どんどんと貴重な東京の都市のクオリティを道路によって破壊しているのです、と説明した。前述した下北沢もそうだが、山手通りとかみると本当に悲しくなるからね。それで、ちょっとスウェーデン人も「はあ、日本もやはりそんなに知恵がある訳じゃないんだ」と落胆していたので、でも、面白い試みをしている自治体もありますよ。三島なんかは少しは参考になるのではないですか、と先週行ったばかりであるが三島を紹介すると、また乗り出すようにして話を聞き入った。

世界中が自動車依存の高さという問題に悩んでいる。そして、スウェーデンのような知的で勉強をしっかりとする国は、日本はこの問題を解決できる何か素晴らしい東洋の知恵があるのでは、と思い始めている。ドイツなども、日本は21世紀型の成熟した社会をしっかりと維持していく知恵があるだろう、と期待している。これらの二国が、この日本の特異性に気づいているのは、これらの国々の人々は賢いからだと思っている。他の国は、もっと紋切り型に日本を捉えていて、都市の表層的醜さにばかり囚われ、本質的なエコロジー的価値に気づいていない。しかし、スウェーデン人やドイツ人の期待は半分正しくて、半分間違っている。とはいえ、せっかくこれだけ評価されているにも関わらず、なんで日本の行政は反対の方向に突っ走る、つまり、せっかく評価されているものを壊すような方向に行くんだろう。本当にまか不思議である。ここらへんを行政の人達や政治家がどの程度、分かっているのかは知りたいものだ。東大の客員教授をしているチェスター・リーブス先生なども、そのような主張をしているが、一部では既にボイコットされているようだ。クリチバのレルネルさんも下北沢が素晴らしいと言ったら、私も仲介しようとしていた対談が却下された。ってことは、海外事例を日本の行政なども一生懸命調べているが、都合がいいものだけを選び、都合が悪いものは捨てているんだな。しかし、それにしても、これだけ海外から注目を浴び始めているのに、もったいない。

とはいえ、スウェーデン人が知恵を日本の都市に求める、というのは嬉しいし、力をもらえる。頑張って、研究しなきゃ、って気分にさせられる。



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