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デンマークの環境先進都市であるアルバーツラントを訪れる [サステイナブルな問題]

デンマークはコペンハーゲンの郊外にある自治体アルバーツラントは「世界をリードする」(出所:Newman & Kenworthy, “Sustainability and Cities”)と形容されている環境先進都市である。実際、1986年から二酸化炭素排出量を50%削減することに成功し、さらに2015年までには2006年から25%削減することを目的としている。環境問題にがっぷり四つに取り組み、そして成果を上げているのである。

アルバーツラントはコペンハーゲンの大都市圏計画の一環としてつくられたニュータウンである。都市計画関係者には有名なフィンガープランと呼ばれるコペンハーゲンを中心として5方向に都市軸を延ばして都市の拡張を図る計画が策定されたのが1950年代。この都市軸に沿って、5本の鉄道が整備された。アルバーツラントはコペンハーゲンから西に15キロメートルほどのところにある。郊外鉄道B線の沿線にあり、人口は3万人程度だ。面積は23キロ平米。品川区と同じくらいだから決して大きくはない。そして、そのうち市街地面積は35%だけであり、65%が緑地となっている。駅を中心として市街地は集約されており、周縁部が緑地となっているが、東部は隣の自治体と市街地が連担している。計画は急ピッチで進められ、ある時にいきなり2000戸の住宅を擁する都市が出現したのである。当時の都市計画理論の理想を幕の内弁当のように詰め込んだニュータウンである。

アルバーツラントは市役所がリードして斬新な政策に取り組んでいるのだが、それを実現させている一つの要因は公共住宅そして賃貸の比率が高いことであろう。賃貸住宅に住む市民の割合は61%で、持ち家の比率は34%にしか過ぎない。賃貸住宅はほとんどが民間ではなく住宅公社が整備している。全住宅の51%が住宅公社によってつくられている。さらに戸建て住宅は13%にしか過ぎず、日本やアメリカの郊外のように戸建て住宅が建ち並ぶような感じではない。ただし集合住宅も1階が主体であり、高くても4階である。計画論的には、極めて計画的につくられており、近接性が強く意識された。親近性の高い都市環境がつくられ、当時、コペンハーゲンの衰退した市街地に住む移民者達に住宅を供給した。

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(一部の集合住宅には共有スペースがつくられている)

環境共生の試みは、まず雨水管理から始まった。しっかりした雨水処理のネットワークが計画され、貯水池などを各地に設けた。現在、実施していることはリノベーションが中心である。アルバーツラントは環境技術のテストベッドとして位置づけられてもいる。多くのエネルギー関連の技術の応用が建物や都市で実践されている。断熱や太陽光パネルなどを建物に積極的に応用しているのである。こういうことが実践できるのは前述したように公共住宅の割合が高いからである。また、これらの事業は市役所が勝手に実施しているが、他のグループやEUや国などとも連携したりもしている。加えて、公共交通システムをどのように構築するかといったことも今でも検討している。都市計画を策定した時、自動車交通と歩行者や自転車交通を分離した。デンマークは自転車・歩行者専用道路が多く整備されているが、他の都市と比べてもアルバーツラントは多く整備された。その結果、子供達は学校へ道路を横断しないで通うことができ、デンマークの中でも自転車事故が非常に少ない自治体となっている。これは、アルバーツラントを実際歩くと実感できる。自転車都市として知られているドイツのミュンスターやカリフォルニアのデービスに比べても自転車ネットワークは充実している。驚きの自転車ネットワークだ。

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(市役所の前にある貯水池)
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(広大なる自転車専用道路のネットワークが整備されている)

この夏には気候計画を策定した。これは5年計画であるが、どのように二酸化炭素排出を減らすかの計画である。たとえば街灯を、LEDを用いたものに変えることによって、二酸化炭素排出は50%減少できる。ただし、このような商品は、当時はなかったので市役所が規模の大きなランプ会社に行き、商品をつくってもらうよう交渉した。最終的にはフィリップスがつくってくれた。この街灯はスカンジナビア計画賞など多くの賞を受賞している。

一方で、アルバーツラントは豊かではない。税収も少なく、多くの補助金を得ている。しかし、そのような状況であるからこそ、多くの市民を環境事業に巻き込むことが必要であり、その結果、トップダウンではあっても、市民が積極的に参画するようなスタイルで多くの事業が展開していくことになる。アルバーツラントを現在のように環境共生都市として成長させたのは前市長である。彼は25年間市政をリードしてきた。しかし、2009年の11月、私がアルバーツラントを訪れたその週に新たな市長が選ばれたのである。したがって、今後、アルバーツラントがどのように変わっていくかは多少、見えないところもある。

アルバーツラントが長い間、取り組んできたものに幼稚園で無料の食事を提供していたことが挙げられる。これは、最近ではデンマークの国でもそのようにする法律ができたが、その前からアルバーツラントは実施していたのである。20年前から実施していた。しかも、その食事は近くのバイオ農家でつくられたものを提供するようにしたのだ。

現在、アルバーツラントが積極的に取り組んでいるのは中央駅の環境共生化である。これはデンマーク鉄道との共同事業であり、屋上緑化や浸水性を高めた屋根に変えたり、ソーラーパネルの設置をしたり、LEDを駅に配置したりすることを計画している。また、公共交通の利用促進を図っている。そのために駐輪場の整備、さらに自転車のレンタル・サービスを検討している。また、駅でのゴミ分類を検討している。これは、日本やドイツのように駅でのごみ分類が当然のように行われている国からすると意外であるが、デンマークの鉄道駅ではこれらがまだ行われていないのである。それでアルバーツラントの駅では、それらに率先してごみ分別を駅で行う実験をするようにしている。

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(現在の中央駅も、ショッピング・センターなど都心機能の多くが集まっているが、さらにこれをエコロジカルにしようとする動きもある)

さて、取材の後、せっかくなのでこの歩車分離が徹底された歩道・自転車道を歩いた。自動車がない道は歩くのには快適だが、単調で退屈することに気づいた。1キロ以上は続く直線の歩道。沿道にはレストランや小売店がある訳でも住宅がある訳でもない(途中からは住宅が現れる)。単調な景観で、確かに図面上では綺麗で機能的にみえるかもしれないが、実際、そこで生活する人、歩く人のことまではイメージできなかったのだろうなと推察された。まあ、1960年代、70年代はこのようなニュータウンが世界中でつくられて、アルバーツラントはその中では相当、秀逸であることは分かったが、それでもやはり画一的でつまらないと思わずにはいられない。ここで、酒鬼薔薇のような少年が出現したら、林真理子は友が丘ニュータウンと同じように「画一的な住宅環境で気持ち悪い」と批判するであろう。

さて、私が気になったのはアルバーツラントにおける象徴性の弱さである。環境共生的な試みをするうえでは、シンボルとなるような建築、空間、仕掛けがあるといいと思われる。それは市役所であってもいい。これはクリチバであればゴミ買い運動やバリグイ公園等になるし、チャタヌーガであればオレンジ・リサイクル・センター、ボルダーでいえばグリーンベルトになる。強いて言えば、自転車専用道路になるのかもしれない。しかし、ちょっとデザイン的に単調過ぎて、今ひとつデービスやミュンスターのようには感心しなかった。これはレンタサイクルで回れば印象も変わったのかもしれないが、現段階ではレンタサイクルのシステムはまだ検討中であり借りられなかった。とはいえ、ちょっといただけなので誤解している点も多いかも知れない。しかし、チャタヌーガやデービス、ボルダー、クリチバ、オースティン、ポートランド、フライブルグ、マレーニ、イエテボリ、CATといったいわゆる環境先進都市と言われている都市を初めて訪れた時に必ずといっていいほど感じるインパクトは受けなかった。まあ、報告書上で優れている環境都市なのかもしれない。似たような印象はイギリスの環境都市レスターでも覚えたことがある。

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