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バード・カールスハーフェンという縮小都市を訪れる [サステイナブルな問題]

 ヘッセン州のカッセルの友人宅に泊まる。今日がドイツ最後の日であるが、午前中に友人が興味深い縮小都市があるということで、ヘッセン州の北端にあるバード・カールスハーフェンという縮小都市に連れて行ってくれた。
 この都市は極めて人工的な理由でつくられた。都市が集積するにあたって経済的に有利であるなどの要件があって、ここに都市が形成されたのではないのである。したがって、その人工的な理由がなくなったら徐々に衰退し始め、ヘッセン州という旧西ドイツにおいては、相当に寂れた都市になってしまっている。
ヘッセン・カッセル方伯は、17世紀後半、あることで悩んでいた。というのも、ヘッセン州とニーダーザクセン州は、ヴェーザー川が境となっているが、ヴェーザー川を上って荷物がヘッセンへ向かうとき、このヘッセンの南の下流にあたるニーダーザクセン州のハン・ミュンデンにて課税がかけられていたからである。そこで、この課税を避けるために、ハン・ミュンデンのさらに下流であり、またヘッセン州の最北部である地に港をつくり、そこからヘッセンまで運河を掘削しようと考えたのである。
 また、ヘッセン・カッセル方伯はフランス人の宗教難民に極めて寛容な政策を採っていた。それは、当時は彼らの方がいろいろと先端技術を有しているからだが、この宗教難民達に住まいを提供し、かつ、この運河工事も依頼しようと考えたのである。そこでつくられたのが、ジーブルグという町である。これは、後にカールスハーフェン、さらにバード・カールスハーフェンと改名される。18世紀前半に、この都市はバロック風の街並みを有するとしてとしてつくられた。
 さらに1730年には塩水泉が発見され、温泉・療養施設も建設されることになる。1977年には、都市名がカールスハーフェンからバート・カールスハーフェンと改名したが、これは1970年代後半に保険会社が温泉療養を被保険者に提供ひようと考え、バーデン・バーデンを始めとして、温泉療養(スパ)を広く展開しようと考えたからである。バード・カールスハーフェンもこの温泉療養地として指定され、この頃、無粋なモダニズムの温泉療養の宿泊施設なども建設された。
 さて、しかしこの保険会社のプログラムはただし、高齢化が進み、保険会社の負担が大きすぎるということで80年代後半に中止になるらしい。短命だったのである。一時期、ちょっと温泉リゾート地として栄えたバード・カールスハーフェンも、以前として温泉療養地ではあるが、その後、少しずつ衰退していくことになる。ちなみに、位置づけとしては金持ちのバーデン・バーデンに対して、ブルー・カラーの温泉療養地として位置づけられたようである。
 実際、その人口の流れをみてみる。バード・カールスハーフェンは、その3キロメートル南にヘルマース・ハウゼンという地区があり、そこにほぼ3分の1ぐらいの人が住んでいる。したがって、この自治体の人口がすなわち、バード・カールスハーフェンの都市規模を示している訳ではないことを認識してもらえればと思う。
 1885年の人口は2901人。1939年は3565人。1958年が4829 人で、この数字が最高となる。その後1970年は4674人だが、2009年には3724人。劇的に減少している訳ではなく、真綿で首を絞められるように徐々に人口が減っていっている
 実際、訪れたバード・カールスハーフェンは、見事なバロック都市で、建物はほぼ白色にペンキされており、なかなかのものであった。つくった当時は、ディズニーランド的なテーマパークのようなものだったのかもしれないが、それから300年ほど経っており、その時間の積み重ねが、いい空間の味わいを醸し出している。
 ただし、そもそもこの都市がつくられた目的も消え、さらに、それを再生しようとしたプログラムもなくなり、存在意義が見出せないのが現状であろう。都心部は観光客を中心とした店舗やレストランが多く立地しているのだが、その半数以上は閉店している。ただ、日本の商店街と違うのは、空き店舗でもシャッターを下げずに、ウィンドウ・ショッピングが出来るようなちょっとした工夫が為されていることである。シャッター商店街であっても、見た目はそのように見せない。結構、こういう小さな試みの積み重ねが、この都市の消滅を回避させることに繋がるのかもしれないなと思ったりする。河畔には、ちょっとしたヴェーザー川下りができるフェリーが滞留していた。ライン川下りのようなツアーが既にあるのかもしれないが、この町はその廃れ感も含めて、ちょっとした観光ポテンシャルがあるのではないかと勝手に思ったりもした。
 確かに最近の人口減少は厳しいものがあるが、その当初の存在意義が消失し、その再生計画も頓挫しても、300年間も生存してきた都市である。その将来は明るいものはないが、しかし、生き残っていくような気もしないでもない。何か、あと1つか2つの工夫が必要であるのかもしれないが。

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(バード・カールスハーフェンの街の景観)

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(店は閉店していても、シャッターを下ろさずにウィンドウ・ショッピングはできるようにしている)

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(バード・カールスハーフェンの街並み)
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