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フレイザー島の4WD巡り [地球探訪記]

オーストラリアのフレイザー島で、4WDの島巡りをした。フレイザー島は南北120キロ、東西15キロの細長い島である。世界最大の砂の島で、世界自然遺産として登録されている。この島、面白いことに二つのホテルの敷地内を除くと舗装されている場所が一切無い。ジャングルの中に整備された砂道とビーチが道路である。これら島内の交通手段は、4WDの自動車とセスナ機だけである。セスナ機は海岸を飛行場として使っており、4WDで海浜を走っている時は、セスナ機が発着しようとしていないか注意をしなくてはならない。4WD以外の車はこの島を走ることはできない。これは物理的にまったく不可能であるからだ、ということが島を走り始めて1分もしないで理解できる。なにしろこの砂道が荒れている。車高の低い普通の自動車では、すぐ砂に埋もれてしまう。

ビーチは約120キロメートルにも及ぶ。なんと砂浜の制限速度は80キロメートルだ。首都高速道路とほぼ同じ速度で海岸を4WDが疾走している。とはいえ、筆者はこのスピードで走ることができず、せいぜい70キロメートルくらいしか出せなかった。何しろ、しょっちゅう小川を越えたり、砂のかたまりが現れたりする。また、波が結構、海浜の奥までやってくる時もある。小川はたいてい浅いが、たまに深かったりする。深い場合に、勢いよく小川に入ると、すごい水しぶきがあがり、しばらく前方が視界不良になる。この小川より、さらに危険なのが砂のかたまりである。砂のかたまりに突入するとハンドルが取られる。勢い余って横転する危険に晒される。とはいえ、ゆっくりと入ると動かなくなってしまい、その後、発進させるのは一苦労だ。タイヤが砂に入って身動きできなくなり、下手にあがくとさらにタイヤが深くめり込んでしまい、二進も三進もいかなくなる。まあ、状況が悪化する前にバックをすればいいのだが。そして、驚いたのは波が結構、奥の方まで押し寄せてきて、もう避けられないのでそのまま波に突進したら、まるで強烈なスコールのように水を浴びてしまったことである。大した水量ではないだろうと甘く見ていたら、とんでもない目にあった。波は極力、避けることが重要であることを知る。
IMG_0642.JPG(幹線道路である海浜)

とはいえ、このビーチはフレイザー島でもっとも走りやすい。島を横断する砂道は本当に激しく、運転が大変である。そもそも砂道は平地でも走りにくいのに、横断する道は坂道が多い。砂の坂道は4WDで登るのも相当、難しいことを知る。坂道で1速にギアを入れて発進しようとしても、砂でタイヤが空転してまったく進まない。平らなところまでバックで戻り、勢いをつけて登り切らなくては砂の坂道は乗り越えられない。よく考えると、歩いて砂山を登るのも大変だから自動車も同然なのだろうが、アスファルトの道に慣れていると、ちょっと驚く。まあ、蟻地獄にはまった蟻の気分になる。あと、大変なのはでこぼこである。砂道でもでこぼこは結構、がつんがつん来るが、より強烈なのは木の根っ子が道にまで張り出ているところである。特に、左右のタイヤが同時ではなくて、時間差でこの根っ子に当たる時は、車内は揺れまくる。震度5という感じだ。気分はもう、インディ・ジョーンズだ。なんのために4WDが必要なのか、生まれて初めて理解した。こういうところを運転するために4WDが必要なのであって、舗装された道路を走るのにはまったく必要ないものであることを知る。今回の4WDを借りる時も、レンタカー屋から舗装したところは絶対、4WDにするな、と言われたことを思い出す。
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さて、このように大変な思いをしてフレイザー島のスポットを巡った。一日目は、ホテルのあるユーロン・ビーチから東海岸の北端のインディアン・ヘッドまで、海沿いのビーチを走る。太平洋の海と水平線まで続くかのような砂浜が構成する雄大な景観が美しい。インディアン・ヘッドからは鯨が見えると言われたが、残念ながら発見できなかった。その途中、マヘノ難破船という1935年に座礁した船の残骸が観られる。これは、私的には宮崎駿的な光景で、結構、感動した。それとキャセドラルという色鮮やかな岩山があったのだが、これもなかなかのランドスケープであった。ドライブは全般的に快適だが、途中、ポヤンガン・ロックスとイドニー・ロックスという難所がある。これは樹木の化石がつくりあげた岩場であり、迂回路を通らなくてはならない。この迂回路がまた激しく上下するようながたごと道であった。
IMG_0403.JPG(マヘノ難破船)

二日目はフレイザー島の観光の目玉であるマッケンジー湖に行く。「青い湖」と形容される青からエメラルド・グリーンへとグラデーションしていく湖の色もさることながら、砂浜の白色が何より美しい。感動的な色彩である。とはいえ、たばこの吸い殻が美しい白色の砂浜に点在していたのは残念であった。その後、砂山のでこぼこ道を通って、ビラビーン湖へ行く。ビラビーン湖はマッケンジー湖と違い、水草が生えていたりして、多少、湖の色はマッケンジー湖ほど青が美しくはなかったかもしれないが、砂浜の白色はより綺麗であった。個人的にはマッケンジー湖より気に入った。マッケンジー湖に比べると道路がより激しいので、あまりツアー・バスが来ないために、より原生的な自然を維持できているのであろう。そして、最後に島内最大のブーマンジン湖へ行く。ここはメダカなどの魚もいて、湖の色も一部、赤色であった。すなわち、青色から緑、黄色、赤色と虹色のように色が変化しており、ある意味で神秘的であった。この赤色は植物が出しているのではないかと推察される。というのは、この湖、最近、水位を上げたようで、多くの樹木が湖に沈んでいるからである。樹木どころか歩道までもが湖の底に沈んでいる。湖畔をまったく散策できなかったのは残念であったが、3大湖それぞれが個性を持っており、自然の美しさを堪能できた。このルートはサザン・レーク・ツーリスト・ドライブと命名されており、メジャーなドライブ・ルートだと思われるのだが、道は相当でこぼこでハードであった。特に砂の坂道が多く、登る時には結構、苦労した。1速で相当、エンジンの回転数を上げた状況でないと登れない。フレイザー島には4つの観光ルートが指定されているのだが、4つのうち2つは「道が荒い」と注意を促している。このサザン・レーク・ツーリスト・ドライブは「道が荒い」わけではない。残りの二つはどんだけえ、という気持ちである。
IMG_0505.JPG(マッケンジー湖)
IMG_0521.JPG(マッケンジー湖)
IMG_0545.JPG(ビラビーン湖)
IMG_0561.JPG(ブーマンジン湖)

三日目はワビー湖に行く。トレイルヘッズで自動車を停め、そこから2.4キロのハイキング・トレイルを歩く。ワビー湖は小さいがフレイザー島で最も水深のある湖である。とはいえ、目当ては湖ではない。湖の周辺は広大な砂丘が広がっており、この砂丘が魅力なのである。特に砂丘から太平洋を展望する景観は息を呑む。さて、そこから戻り、車でキングフィッシャー・ベイ・リゾートまで行く。14時発のフェリーに乗るためである。しかし、この道の途中で立ち往生した。砂道の砂にタイヤが取られたからだ。これは昨日も経験したことで大したことではない。その時はバックをして、勢いづけて登り切ることができた。ただし、今回は、前進はもちろんのこと後進もできなくなっている。まさに立ち往生である。タイヤの下に枝を入れたり、タイヤ圧を低くするなどして脱出を試みていたが、そのうちエンジンが焼けるような臭いが漂ってきた。なんせ、このトヨタのランドクルーザーは30万㎞も走行しているお爺さん自動車である。どうにもならないので、しばらく冷やしてからまた試みたら、どうにか脱出することができた。とはいえ30分間は時間を無駄にしてしまった。急いでフェリー乗り場のキングフィッシャー・ベイ・リゾートへと飛ばすが、途中、二回ほどエンストしたり、対向車と道を譲り合ったりしていると予約のフェリーの時間に乗り遅れてしまった。まあ、これは二時間後のフェリーが再予約できたのでハービイ・ベイまでは無事に戻ることができたが、最後の日に最大の試練が待ち構えていた。
IMG_0626.JPG(ワビー湖)

さて、3日間、フレイザー島を4WDで巡り、つくづく感じたのは、道路を舗装しなかったフレイザー島そしてクイーンズランド州の賢慮である。日本だったら、このような観光地があったら100%舗装道路を整備しようとするであろう。そもそも、道路を整備しなければ観光開発に繋がらない、と考えるのが日本的考え方である。したがって、同じ世界遺産の知床にも立派な道路が整備されているし、石垣島の西方にある竹富島も道路がしっかりと整備されている。フレイザー島が日本にあったら同様に舗装道路をしっかりと整備するであろう。フレイザー島の運転は難しい。しょっちゅう事故も起きているし、死亡事故も発生しているようだ。しかし、この4WDだけ(あとセスナ機)でしか移動できないという制約を課しているからこそ、フレイザー島の魅力を来訪者は最大限に味わうことができているのである。砂道であるからこそ、周辺の自然環境と融和している。我々もよりフレイザー島の自然の魅力を味わえる。これが舗装道路であったら随分と興ざめしてしまうと思われるのである。舗装道路という自然条件を克服する、つまり人間の力で自然を管理できるものを導入することで、我々は逆に自然を遠ざけてしまっているということにフレイザー島に来ると気付かされる。フレイザー島には橋がない。川はすべてそのまま乗り越える。当然、水量が増えた時には通り越せない。海浜通りもそうである。満潮時になれば道は消えてしまう。しかし、それには対応すればいいのである。満潮の時間は予測できる。その満潮の時間を避けてスケジュールを立てればいいだけの話しである。筆者も車をレンタカー屋で借りる時に、この満潮の時間を教えてもらった。それはそれで不便であるが、そのような事態を回避するように知恵を使えばいいだけの話である。そして、この不便さが、フレイザー島が本来、有している魅力を大いに発揮させている。フレイザー島の魅力を味わうためには、相当の努力をしなくてはならない。お金もかかった。しかし、そのような努力を厭わないものだけが、その魅力を知ることができるという敷居の高さも、またフレイザー島の魅力であろう。便利にすれば、それだけ人が来るだろう、と道路を一生懸命整備しても、観光地の魅力向上にはほとんど繋がらないことをフレイザー島の事例は示している。そして、そのようなことは、我が国でも馬路村のような賢明なところは理解している。便利であるというのは女性でいえば、誰とでも付き合うような人である。誰とでも付き合う人がもてると思ったら決してそうではない。魅力的な女性であれば、多少敷居が高くても、もてるものである。道路を整備するというのは、その観光地に惹かれていないような人でも付き合えるということである。それで、じゃあ、多くの人が来るかというと決してそんなことはないし、デートをしても(訪問しても)、宿泊まではしないで、そのまま帰ってしまう。フレイザー島はむしろ敷居を高くすることによって、その魅力を存分に発揮しているのである。道路が舗装されていないからこそ、筆者はフレイザー島の思い出を強くしたし、来て、散財しても納得できるのである。逆の例として、白神山地がある。白神山地はそもそも青秋林道という馬鹿げた道路を整備することの反対運動がきっかけで世界遺産の指定につながった。しかし、世界遺産に指定され観光客が増えることが予測されたためだろうか、十二湖と弘前とを結ぶ道路をしっかりとしたものに整備しようとしている。筆者は十二湖からこの弘前へ向けてレンタカーを走らせたことがある。途中、がたごと道を走ったが、それはそれで風情があるものだった。しかし、ところどころ、非常に高規格な道路に整備されていた。こういう高規格な道路は白神山地のような自然遺産とはマッチしない。興醒めするだけだ。白神山地も道路は一切舗装しないで4WDだけ入れるようにする、などの工夫をすると自然保護の観点からも観光地としての魅力の向上という観点からも効果的であると思う。もしフレイザー島の道路が舗装されていたら、その魅力は半減されていたし、おそらく現在のように観光客は来ていないと思うのである。こういうことが何故、オーストラリア人は理解できて、日本人は理解できないのか。大変、残念であるし悔しい。


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