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『IBAエムシャーパークの地域再生』を読む [書評]

『IBAエムシャーパークの地域再生』を読む。この本は、ドイツのルール工業地帯で1988年から展開したIBAエムシャーパーク事業の120余りのプロジェクトが、どのように進めたられたかを報告し、またその成果への評価を整理したものである。
 これらのプロジェクトで筆者が、特に感銘を受けたのは、エムシャー・ランドスケープパークである。エムシャー・ランドスケープパークというのは、ライン河畔のデュイスブルグ市からベルクカメン市までの東西約70km、約300キロ平米を対象に計画されている広域緑地である。この計画内にさまざまなプロジェクトを内包させ、そのランドスケープに「新たな質を持たせ、相互に関連する広域緑地を形成すること」を目的とした。
 ルール工業地帯の緑地とは、市街化しなかったところである。市街化しなかったといういわゆる図に対する地の部分を主人公とした地域計画が、このエムシャー・ランドスケープパークであるとも捉えることができるであろう。図である市街地が、基幹産業の衰退、人口の減少、経済の縮退といった状況に晒されている中、将来の地域計画において、地に着目したというのは、縮小地域の計画論としても有効であると思われる。
 この計画のアプローチの優れているところは、ランドスケープに着目したことであろう。本書では次のように指摘されていた。「自然緑地は概ね破壊されてしまったが、それでもこの地域には今もなおランドスケープとしての美しさが残っている」。
 縮小地域において、どのような計画を策定できるのだろうか。経済的な計画をすることは難しい。土地利用的にも、土地利用の高度化を図ることは無意味である。そのような状況下で、ランドスケープを再生させるというのは意味があると思われるのである。
 日本は地形の起伏が激しく、そのランドスケープの多様さは特筆すべきものがある。しかし、このランドスケープといった観点から国土計画をするといった発想に乏しい。国土開発軸といった抽象論での計画論は盛んであるが、そこにあるランドスケープを活かす、といった考えは寡聞にして知らない。それは、国立公園の整備においても、あまり考えられていないのではないかと思う。しかし、日本も社会が成熟化し、経済も規模的な発展がもはや期待できない、というか無茶をしなければ経済成長ができないような状況になっている現在、ランドスケープという経済とは違った指標で括り、国土をデザインし直すことが有用な時期を迎えているのではないだろうか。
 エムシャー・ランドパークの計画を策定するうえでは、「ヨーロッパにおける地域間競争の中で、ルール地域が将来も競争力を維持していくには、どのようなランドスケープ的資質に戦略的な意義を持たせるべきかを、構造政策や経済政策から判断すること」を踏まえた。「ランドスケープ的資質に戦略的な意義」って、凄い観点である。我が国の地域戦略においては、このような観点はまったくもって欠如している。というのも、そもそも広域的な地域戦略が策定されることは、行政レベルでは地域の連携が取りにくいし、電力会社や地方の経団連的なものは提案という形でしたりはしているが、それでも経済開発重視で、ランドスケープで地域を括るということはほとんどされていないと思うからである。こういう地域計画などの鋭さに関しては、ドイツには凄みがある。
 IBAのアプローチはいろいろな面で参考になるが、個人的にはこのランドスケープをコンセプトの中軸に据えたということが、この事業から日本が学ぶべきことなのではないかと、この本を読んで思った次第である。





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