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『クルマが鉄道を滅ぼした』は衝撃の書である [書評]

 ブラッドフォード・スネルが著した『クルマが鉄道を滅ぼした』を読んだ。この本の衝撃度は凄い。アメリカの自動車社会は人々が望んだ結果であるという説を真っ向から否定する。それはGMを中心とする自動車会社が創出したのである、ということを本書は多くのデータ、資料を駆使して論証する。凄すぎるなGM。こんな凄まじいことができた企業が、現在、その存亡も危うい状況にあることは驚くべきことであるが、これはむしろ、それまでの成功によってもたらされた危機とも解釈できる。積極的なロビー活動、アメリカ国内での企業買収による競合相手の吸収、市場独占による市場のコントロール・・・まあ、ここまで自分の技術を磨かずに、手練手簡を弄することで金儲けをして、それによって首尾良くこれまでこれたら、競争力がなくなるのも致し方ないことかもしれない。
 GMなどの自動車メーカーの陰謀によって、路面電車がアメリカの都市から駆逐されたことは、以前から知っていたが、路面電車を駆逐するうえで活躍したバスをまで放逐しようとしていたことには驚いた。
「1952年、すなわちGMがバス製造の独占を達成したとき以来、バスの利用者は30億人減少し、バスの売り上げはおよそ60%減少したのである」
 そしてGMはアメリカの社会を自らが最も利益を上げるシステムへと改造していくのである。恐るべき野望であるが、これを実現させたということが本当に恐ろしいというか、感心してしまう。
 GMは自動車だけではなくバス、トラック、そして何と鉄道機関車の製造でも全米トップに立った。しかし、GMがつくる商品の中で、鉄道機関車に比べて遙かに自動車とトラックを販売した方が粗利益は大きかった。この本によれば、25倍〜35倍の違いがあったそうである。
「(1961年)当時GMは旅客輸送用機関車の100%、米国で製造される全機種にわたる機関車全体の77%を占めていた」。すなわち、もう1960年当時では、自動車のライバルである鉄道の製造を自らの手に握っていた訳であり、その利益率が低いことから、鉄道自体を市場からほぼ放逐させ、自動車の利益を最大化することをいつでもできるような状況にあったのである。
 公共的な利益ではなく、私企業の利益の最大化を図ろうとしたその結果として、アメリカは自動車社会になってしまったということが、本書を読むと分かる。すなわち、アメリカという社会は民主主義的に運営されていたのではなく、GMによって、GMの都合がよい社会へと変換させられていったのか、ということを知る。
 そして、その結果、アメリカは極めて移動エネルギーの効率性の悪い国土となってしまい、それを維持するために中近東で戦争をしなくてはならなくなっている。しかし、本書によれば第二次世界大戦においてGMはアメリカだけでなく敵国のナチス・ドイツにも製品を販売して相当儲けたようなので、戦争をしなくてはならないといった状況も好ましいのかもしれない。なんか、現状のアメリカの惨憺たる状況はGMによってつくられたとも読めないことはない。しかし、こんな世界をまさに牛耳っていたGMの現状の惨状をみると、本当、栄枯盛衰盛者必衰という平家物語の言葉が頭をよぎる。
 本書は1974年に書籍ではなく、報告書という形で発表された。それから35年経ち、筆者も今のGMの惨状に驚いているのかもしれない。しかし、筆者の指摘通りであれば、まさにGMがいなくなることが新しいアメリカへと変化していく大きな契機になることは間違いないとも思われる。GMの救済にどうアメリカが動くか。本書を読むと、その動向がさらに興味深くなることは間違いないだろう。


クルマが鉄道を滅ぼした―ビッグスリーの犯罪

クルマが鉄道を滅ぼした―ビッグスリーの犯罪

  • 作者: ブラッドフォード・C. スネル
  • 出版社/メーカー: 緑風出版
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本



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