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エッセンにある原子力発電所のトレーニング・センターを訪れる [原発問題]

 エッセンにある原子力発電所のトレーニング・センターを訪れる。ここでは、原子力発電所の管理者のトレーニングをしている。原子力発電所の事故の50%は技術ベースだが、50%はヒューマン・エラーである。このヒューマン・エラーの部分を極力、減らすためのトレーニングをすることを目的とした施設である。
 このトレーニング施設は、国の法律によってつくられた。原発で働く人はしっかりとトレーニングされる必要があるからだが、そのために必要なお金はすべて電力会社が支払った。これを電力会社が負担しなくてはならないように法律で定めたのである。したがって、投資元はEON Kernkraft、Power Artiengesellschaft, Kraftwerke AG,
Vattenfall Europe Nuclear Energyといったドイツの四大電力会社、そしてオランダの電力会社も入っている。オランダは1基しか原発がないので、このようなトレーニング・センターがないので、ここでトレーニングをしているのだ。ここでの投資額は350億ユーロ。毎年、ここの運営費として26億ユーロの予算が使われている。
 ドイツでは、原発は10基がまだ稼働している。エネルギーの18%は未だ原発が占めている。ということで、脱原発を進めているドイツではあるが、このようなトレーニング・センターをしっかりと維持している。とはいえ、1機20億円するシミュレーターの一つはもう必要ないということで廃棄された。
 ドイツの原発は最初の原発が稼働してから35年間、大規模な事故がなかった。まあ、単にラッキーだったのかもしれないと同センターの講師は言う。ただし、たまに機械が故障する。それでも、他国に比べればドイツの原発は経済的な効率だけでなく、安全でもあると言う。その理由は、安全に投資をしているからであって、ドイツのジーメンがつくる原発は、安いメーカーに比べて2倍もする。これは安全性にお金をかけているからだそうだ。
 原発の特徴としては、二酸化炭素を排出しないことだと講師は言う。原発を稼働させることで1億2000万トンの二酸化炭素を排出せずに済む。しかし、放射性廃棄物という問題がある。ドイツでは、これに関しての問題を深刻に考えたことがなかった。しかし、100年間保存するところは確保できたが、それ以上のものはないと説明する。このように放射性廃棄物の問題があることを原発の技術者の講師が、しっかりと明確に説明することに感心する。変に隠したりしないことで、しっかりと信用を得たいという意志が感じられる。私は日本では、こういう原発の施設を訪れたことがないのだが、日本でもずばり痛いところもしっかりと説明をしているのだろうか。
 ドイツは2022年に原発を全停止することが既に1991年に決定されていた。しかし、この決定には問題がある。ちょっと原発を停止するには、ちょっと準備が足りないので延期しようとしたのだが、福島原発事故でやはり2022年に停止すると決定してしまった。その原発の代替電力として、現在は、風力発電、太陽発電を考えている。しかし、これは難しいとの講師の意見。なぜなら、電力線が必要であるし、高価であるからだ。これによって、家計の電力の負担が上がる。1kWhの16セントから25セントまで上がる。そのうち30セントまで上昇すると予測される。これは、例えば再生エネルギーの電力供給をしているナチュアシュトロムの予測とは大幅に違うが、まあ、どちらも自分達に都合がいい数字を出しているのかもしれない。しかし、風力発電、太陽発電の技術が進展し、市場を拡大することで、ここらへんの数字は下がっていくと思われるので25セントまで上がるというのはちょっと説得力に乏しい。
 原発技術者は、その資格を得るためにここでトレーニングをして試験をする。この場合は、トレーナーが事故のシミュレーションを起こし、それにしっかりとトレーナーは対応しないといけない。対応できないと資格を得ることができない。一般的な原発技術者になるためには、3年から5年は研修をすることが必要となる。
 ここで訓練をすると技術はしっかりと習得できる。しかし、技術はあっても態度が重要であると講師は指摘する。市内の道路には速度制限がある。しかし、そこで規則を守らなくても捕まらなければ、それを守るであろうか。そこで守れるか、守れないか、といった態度の問題が重要であるとこのトレーニング・センターでは考えている。技術+態度があって、責任感へと結びつく。そして、この責任感がプロフェッショナル精神へと繋がる。
 興味深い話としては、このシミュレーション施設と同様のものをつくって欲しいと、このセンターに依頼しているのが、アラブ首長国連邦であるということだ。産油国であるアラブ首長国連邦がなぜ原発のシミュレーション施設なのか。驚く私に同センターの講師は、いやアラブ首長国連邦もサウジアラビアも石油が枯渇しつつあるので、エネルギーを原子力発電所にシフトしているのだとの説明。本当かよ、と私が訝しがっているのを察知されたのか、サウジアラビアは韓国に原子力発電所を発注したのを知っていますよね、と尋ねられた。いや、知らなかった。そうだったのか。それにしても産油国として、石油が枯渇した後を考えるのは分かるが、その代替案が原子力発電所とはなあ。そもそも政情もおそろしく不安定で、現在は技術を石油の金で買っているような国が、非産油国が脱石油で開発してきた原発を、石油の金で買おうとしていることに猛烈な違和感を覚える。というのは、例えばドバイというのは私が知っている限りでも、最もエネルギーを無駄に使うようなシステム、構造の都市である。例えばドバイ空港も、本当に省エネなどに努めている国を嘲笑するかのように、巨大な電光掲示板がど派手な広告を24時間流すような、エネルギーを超絶無駄にするような施設である。このようにエネルギーを一方で無駄にして、石油エネルギーを浪費しているのに、この石油エネルギーが枯渇することも考えていて、しかもその方策が原子力発電所。
 中東の産油国にとって、エネルギーは国力のほとんど全てである。そのためには、石油エネルギーを効率よく大切に使うといったコンセプトをむしろ自ら研究して、それを世界的に発信するようなことをするべきであると思われるのに、エネルギーを大量に無駄にするドバイ・タワーや人工島などをせっせと造っている。ちょっと申し訳ないが、本当に馬鹿な国であると思う。ただの馬鹿成金だ。というか、あれだけ太陽光が得られる広大な土地があるのだから、それらの新エネルギーの研究などに投資をすべきであるのに、技術的にも劣っていて危険性も極めて高い原発を導入してしまう。日本も馬鹿だが、中東も馬鹿だ。これだけ馬鹿ばかりの人類は、滅びるのが必然なのではないかと、最近は絶望的な気分になってしまう。
 話が横道に逸れてしまったが、この原子力トレーニング・センターを訪れ、ドイツは安全性においても世界でも最高水準の原子力発電所を管理していて、それにも関わらず、脱原発を志向したということを知り、やっぱりこの国はとてつもなく立派なところがあるなと改めて思った。また、面白かったのは、この原発大推進派の講師が、フランスの原発は危ないと指摘したことである。フランスにもここと同様のトレーニング・センターがあるが、全然、レベルが違うそうだ。また、原発の管理水準もドイツと比べると遙かに杜撰であると批判していた。特に危ないのはストラスブールのそばにある発電所であり(名前は聞いたのだが失念した)、フォルトラインの上にもあり、原発も古く、けっこう危険なようだ。以前、フランス人の留学生が、私の講義で、これまでのフランスの原発事故の歴史を発表し、そのうち大きな原発事故が起こるだろうと言ったことがあるのだが、まあ、それを裏付けるような話である。しかし、原発は大丈夫であるといいつつ、フランスの原発は危ない、と思わず本音を言ってしまう、このドイツ人の講師に私は人間的なものを感じつつ、でも、それを聞いた私は、やっぱ原発は危ないなと確信してセンターを後にした。

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